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雇用保険「流用」、失業以外が5割超に 時短給付に拡大へ

雇用保険の適用範囲が広がっている

雇用保険制度の給付対象を本来の失業から広げる動きが拡大している。政府はすでにIT(情報技術)資格といった教育訓練などに広げ、足元では少子化対策の一環で時短勤務者向けの給付金を雇用保険から出す調整に入る見通しだ。相次ぐ「流用」で失業給付は全体の5割を下回っている。

増税を避けるため政府は使いやすい雇用保険を活用している。保険料がさらに上がれば見えにくい負担増となり、受益との関係が曖昧になる。

育児期に短い時間で働く人への給付は、政府が6月13日にまとめた「こども未来戦略方針」に「育児時短就業給付(仮称)」として明記した。0〜1歳の子どもがいる人に時短勤務でも手取り額が減らない給付を想定する。詳細は労働政策審議会厚生労働相の諮問機関)で設計し、2025年度から導入する。

 

政府は給付を雇用保険制度に組み込み、保険料を財源とする方向で調整に入る見通しだ。働く人の保険料をあてるか、企業拠出分のみをあてるかは今後、議論する。

最近の雇用保険は失業に関する給付以外の伸びが大きい。

23年度は育児休業給付の予算額が7625億円と、10年前の2.5倍程度になった。失業等給付は1兆2561億円とほぼ横ばいで、育休向けは失業向けの半分を超える。雇用保険の給付に占める失業等給付の比率は5〜6割で推移してきたが、新型コロナウイルス禍の20年度は事実上の給与補塡となる雇用調整助成金が膨らみ、比率は2割程度まで下がった。

 

政府は年収が一定額を超えると社会保険料が発生して逆に手取りが減る「年収の壁」に対し、企業に1人あたり最大50万円を助成して手取り減を防ぐ仕組みも検討している。この財源も雇用保険が想定されている。

 

厚労省は22年4月と10月、23年4月に相次ぎ雇用保険料率を引き上げた。育児関連の給付が増えればさらなる引き上げは避けられず、失業向けの比率はさらに低下する可能性がある。給付対象の拡大で負担と受益の関係が曖昧になれば、制度の趣旨が問われる。