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フォード、窮余のスト終結 「25%賃上げ」EV化に試練

フォード、窮余のスト終結 「25%賃上げ」EV化に試練

 日経新聞は以下のように報じた。 


UAWがフォードの拠点で実施してきたストは終結する(ミシガン州のフォード工場)=ロイター

 

 米フォード・モーター全米自動車労組UAW)の労使交渉が25日、暫定合意に達した。UAWによるストライキ終結する。労組に大幅に譲歩したフォードはコスト増大を避けられず電気自動車(EV)シフトが難航する懸念がある。

 フォードとUAWは25日夜までに、4年間の労働協約の更新を巡って暫定合意に達した。同日、UAWのショーン・フェイン会長は「スト実施から40日間で、歴史的な合意に達した」と述べ、成果を強調した。

 UAWによると、両者は協約期間中に25%賃上げすることで合意した。物価に応じ賃金が上がる生活費調整(COLA)制度の復活や、組合員の賃金格差を解消する措置も協約案に盛り込んだ。フォードは工場を閉鎖する際、労組がストを打つ権利も認めた。

 フォードとUAWは7月中旬から協約見直しの交渉を進めてきた。当初と比べると、フォードは大幅にUAWに譲歩した。今回25%となった賃上げ率に対する会社側の初期回答は9%だ。

 

初任給は、68%アップ

一律の賃上げやCOLAの復活、2000年代後半の経営危機以降に入社した組合員の賃金水準が低い「2階層賃金」の解消は、中長期のコスト増加に直結する。UAWは25日、組合員の初任給は68%上がると説明した。

フォードは暫定合意が業績や事業に与える影響について明かしていない。26日(米国時間)に2023年7〜9月期決算の発表を予定しており、経営への影響についての言及が注目される。

UAWが当初掲げた40%の賃上げなどの要求をフォードがのんだ場合、人件費の増大は、EBIT(利払い・税引き前損益)ベースで年間15億ドル(約2200億円)の減益要因になるとの試算があった。

フォードの22年12月期の調整後EBITは104億ドルで、本業のもうけが1割以上、目減りしかねない規模だ。暫定合意の内容はこれを下回る見通しだが、それでも大きなコスト負担になる。

UAWは9月15日にストに入った。一連の交渉を通じたフォードの回答内容は、「ビッグ3」と呼ばれる米自動車大手のゼネラル・モーターズGM)、欧米ステランティスに比べ水準が高いとされてきた。

それでも、先週時点では交渉は難航していた。

フォードのビル・フォード会長は16日、UAWによるスト実施後に初めてコメントを公表し「労使は敵ではない。他の自動車メーカーが共通の敵だ」と呼びかけた。

これに対し、フェイン氏は20日に「フォードは煮え切らない態度をとり続け、私たちの要求にこたえる余裕がないふりをしている」と述べた。交渉の溝が埋まっていない点を強調し、条件の積み増しを求めていた。

両者はこの数日、協議を重ねたもようだ。歩み寄った決定打は明らかではないが、フォードはこれから米国内に設けるEVの電池工場の労働者をUAWとの労働協約でカバーしていくことなどを土壇場で認めた可能性がある。

UAWは23日にステランティスの主力工場にストを広げた。24日には、GMが23年7〜9月期決算で「会社の将来を危うくする要求はのめない」と労組をけん制した直後に、同社の稼ぎ頭であるテキサス州の工場でのストに踏み切った。

「これがチェックメートになった」と25日にフェイン氏は話した。フォードが誇る米国最大の人気車種「F-150」をつくる工場がまだスト対象になっておらず、フォードは26日に決算発表を控えていた。

フォードは25日「暫定合意を喜ばしく思う」とコメントしたが、手放しで喜べる状況にはない。フォードは経営の最優先事項とするEV化に向け、今が正念場だ。23年12月期にEVは45億ドルの赤字の見通しで赤字幅が広がる。

EVの米国での販売台数は23年1〜9月で5万台程度で、最大手テスラの10分の1の規模にとどまっている。ガソリン車と商用車で稼いだ資金をEV向け投資に回し、EV事業の規模を急拡大していく計画だが、人件費の増加はこれらの事業の採算を悪化させ、投資余力をそぎかねない。

UAWのストを巡っては、フォードが暫定合意に達したことで、GMとステランティスの対応が焦点となる。

COLAなどを巡って交渉が難航しているもようだが、フォードの暫定合意の内容が「基準」となり、2社は早期の譲歩を迫られる可能性がある。25日にフェイン氏は「GMとステランティスにプレッシャーをかけ続ける」と話した。

ビッグ3とUAWの労使交渉の結果は、自動車産業に加え、他の製造業にも波及する可能性がある。ビッグ3のコスト増は、当面はテスラやトヨタ自動車などUAWと関連がないメーカーの追い風になる。

半面、これらのメーカーの労働者の待遇改善要求につながったり、人材の採用に影響が出たりする可能性がある。

UAWはこれから、今回の暫定合意の内容をフォードの組合員約5万7000人の採択にかける予定だ。一連の手続きを経て、新労働協約が発効することになる。

 

【視点】

米国は、今春以降、ハリウッドでも、AI活用による仕事削減等で、脚本家や俳優がストライキ。また、自動車工場では、4年で40%の賃上げを求めてストライキ

大企業が莫大な利益を確保し、莫大な株主配当をしながら、物価に追いつかない賃上げしかしない企業に対し、もっと、組合は賃上げ要求すべきではないか。