全国学校非正規職労組は集会で尹氏の退陣を求めた
日経新聞は、以下のように報じた。
韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が一時宣言した「非常戒厳」に端を発した労働組合のストライキが相次いでいる。大統領の退陣を求める野党の支持基盤である労組が最大20万人を動員する。自動車など主要産業に支障が出始めた。
「民主主義が崩れれば労働者の権利も一瞬で崩れる。暮らしを守る闘争だ!」。5〜6日にストを実施した現代自動車の労組は声明で、尹氏の退陣を求めた。
地方都市の蔚山、牙山、全州の工場やオフィスで勤務する約4万3000人の組合員が午前と午後に2時間ずつストを実施した。戒厳宣言を受けて急きょ決めた。
ストを主導したのは上部団体にあたる全国金属労組だ。傘下の現代自のほか、完成車メーカーの起亜や韓国GM、自動車部品メーカーの現代モービスなど韓国の自動車産業を支える従業員7万人以上がストに加わった。
生産への支障も出た。企業側の試算によると、一連のストで自動車の製造台数は現代自が約3600台、韓国GMが1000〜2000台減少したという。
金属労組は尹氏がこのまま退陣しなければ、11日から無期限ゼネストに突入するとしている。ストが長引いて生産への影響がさらに大きくなる可能性がある。
もともと労使交渉の不調でストを予定していた労組も、尹氏の戒厳宣言を受けて政権に批判の矛先を向けている。スト実施のために各労組が開く集会は、退陣を求める抗議デモの場となった。
全国鉄道労組は5日の始発から無期限ゼネストを始めた。ストは1年3カ月ぶり。現場で働く組合員の約3割に当たる4800人がストに入り、6日朝時点で高速鉄道KTXや貨物列車のうち約3割が運休している。
小中高校などの非正規職の教員や給食調理師らで作る全国学校非正規職労組も6日、全国で6万人が一斉にストを始めたと発表した。ソウルで同日開いた集会で「富裕層への減税で教育予算を削減し、民生を破綻させる尹大統領を辞めさせる」と訴えた。
こうした労組を束ねるのは、強硬労組として知られる韓国最大の労組「全国民主労働組合総連盟」だ。尹政権に対峙する野党を支持する左派の団体だ。
4日には「尹錫悦が退陣するまでゼネストを続ける」と表明し、傘下の労組にストを呼びかけた。同労組は会員数をもとに「スト参加者は最大で20万人になる」と説明している。
政府は警戒を強めている。国土交通省の朴庠禹(パク・サンウ)長官は6日、ソウルのターミナル駅を視察した。鉄道の運休が相次ぐ現状を「利用者の安全や混雑が懸念される。国民に大きな不便が及んでいる」と非難した。
雇用労働省の金文洙(キム・ムンス)長官も「韓国経済が厳しいなか、労働界の混乱を招くストで良いことは全くない」と批判した。「労組に不法な動きがあれば法律に即して厳格な対応を取る」と強調した。
韓国経済は、インフレによる内需の低迷や最低賃金の上昇、最大の輸出先である中国経済の不振で悪化している。戒厳宣言の余波で為替のウォン安が進み、株式市場も動揺した。不安定な政治情勢が続けば、産業競争力の低下にもつながる可能性がある。
【視点】
今回の勧告の事態は、日本の憲法に「緊急事態」条項を新たに設けることの危険性を示している。日本では、自民、公明、国民民主、維新の改憲勢力は、緊急事態条項の創設を強く主張している。
緊急事態下では、憲法、法律の効力が停止され、国会が無視され、反対意見を封殺し、表現の自由、集会の自由、報道の自由などの基本的人権が制限される危険性が大きい。
韓国や他国の緊急事態における問題点を分析するとともに、ドイツや日本の過去の事例を検証し同じ過ちを繰り返さないようにしなければならない。