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太陽光発電2割に土砂災害リスク 審査・監視追いつかず

全国の太陽光発電設備(500キロワット以上)の2割が土砂災害リスクの高いエリアに立地していることが分かった。適切な管理がされていない開発は土地の保水力を低下させ、崩壊を招く恐れが増す。持続可能性を高めるには事業者による点検・管理、行政の監視強化など、防災対策が欠かせない。

埼玉県西部に位置する横瀬町。土砂災害特別警戒区域を含む山林の急斜面を一般家庭用換算でおよそ200世帯分に相当する大きさのソーラーパネル(1088キロワット)が覆う。下方には民家が立ち並び、国道が走る。

発電所を巡っては2015年の建設時、計画区域以外の無届け伐採などが判明。事業者が計1145本の植林と排水設備の設置を明記した是正計画を町に提出していた。

 

※情報公開請求で得た資料と現地映像・衛星画像とを比較検証した 

設備の不備 ドローンで発見

日本経済新聞は2月、町への情報公開請求で得た是正計画図面を基に上空へドローンを飛ばし現況を調べた。パネル周囲には樹木がほとんど確認できず山肌が露出し、排水設備も十分に整備されていなかった。計画未履行の疑いを町に指摘。町は2回にわたり現場を検証し、植林、排水設備計画が履行されていないことを視認した。

情報公開請求で得た資料と現地映像・衛星画像とを比較検証した 

農林水産省などによると、太陽光発電設備は開発時の樹木伐採による山の保水力低下やパネルからの雨滴や支柱を伝わって浸透する水により地表の浸食を招きやすい。地域防災が専門の山梨大学の鈴木猛康名誉教授は「明らかに土砂災害の脅威が増す」と指摘する。

リスクの高いエリアに設置された太陽光発電設備は全国に点在する。国立環境研究所が公開した500キロワット以上の9250件のデータ(20年時点)を分析したところ、18%にあたる1658カ所が国、都道府県の指定した土砂災害(特別)警戒区域、土砂災害危険箇所、急傾斜地崩壊危険区域、地すべり防止区域のいずれかに設置されていた。

内訳は土砂災害(特別)警戒区域881カ所、土砂災害危険箇所1278カ所、急傾斜地崩壊危険区域7カ所、地すべり防止区域27カ所。地域別では九州・沖縄が354カ所で最も多かった。

開発実態、届け出とズレ

太陽光発電設備に起因する災害を防ぐには自治体による審査・監視が不可欠となるが、急増する開発に体制が追いついていない。林地の開発実態を把握しうる職員は過去10年で2%減少した。脆弱な体制は開発時の届け出面積と実態のズレを見逃す要因となり、規制の実効性を低下させている。

人員不足 衛星画像で補う

横浜国立大学の板垣勝彦教授は「地方自治体は慢性的な財政、人手不足にある」と話した上で「監視体制に隙間を生まないため県と市など行政間の連係を強めることに加え、少ない人員でも監視を強化できる体制をつくるべきだ」と指摘する。

総務省によると、林地の監視などを担当する自治体職員数は22年時点で全国1万1048人。林業の衰退に伴い微減傾向が続く。こうした中で監視の実効性を高めるには、新たな技術の活用が欠かせない。