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夏のボーナス過去最高89.4万円 鉄道や百貨店がけん引

日本経済新聞社がまとめた2023年夏のボーナス調査最終集計(6月30日時点)は、全産業の平均支給額が前年比2.60%増の89万4285円だった。2年連続で過去最高を更新したが、伸び率は鈍化した。物価高が長引いて実質賃金のマイナスは続く見込みで、消費回復には不透明感もある。

非製造業、コロナ禍から回復鮮明

上場企業を中心に比較可能な406社を対象に集計した。9.96%増と過去最高の増加率だった非製造業が全体をけん引した。夏季賞与は、業績連動方式をとっている企業が4割を占める。非製造業は新型コロナウイルス禍からの業績回復が鮮明だ。上場している非製造業の23年3月期の純利益は前の期比11%増だった。

全体の伸び率は前年の11.29%から大幅に縮んだ。組合員数で全体の7割超を占める製造業が0.82%増にとどまったことが響いた。製造業の3割が、今後のボーナスに原材料価格の上昇が影響すると答えており、先行きに影を落としている。

鉄道・バスの伸び率最大

非製造業は11業種中9業種でプラスだった。鉄道・バスの伸び率が最も大きく26.81%増だった。JR東日本が18.04%増の89万8700円。前年の15.06%に続き、2年連続で2ケタ増となった。コロナ対策の行動制限の解除で純利益は3期ぶりに最終黒字を確保しており、「従業員の尽力や物価上昇を勘案した」(担当者)という。インバウンド(訪日外国人)需要の拡大が見込める空運も好調。全日本空輸が増加率2位で100%、日本航空も36.23%増で9位だった。

情報・ソフト(12.24%増)が続き、大塚商会が14.40%増の154万4876円だった。業績に加え「22年夏にベアを実施した」ことも底上げにつながった。不動産・住宅は8.93%増。前年の12.91%増から鈍化したものの夏・冬を通じて大幅増が続いている。積水ハウスは米国での住宅受注などで業績が好調なことを反映し、8.79%増の178万2000円だった。

訪日客に期待、百貨店好調

訪日客拡大への期待感や新型コロナの「5類」移行による経済活動正常化への期待感から百貨店・スーパーも6.30%増だった。高島屋は前年比9%増の77万6976円。訪日客の回復で業績が好調だったことに加え、物価高に対する従業員の生活不安払拭、従業員のエンゲージメント(働きがい)向上の狙いがある。大丸松坂屋百貨店も21.59%増と大きく伸ばした。

交渉時期が遅かった企業は支給額が伸び悩んだ傾向もみられた。23年の春季労使交渉までに夏ボーナスの支給額が決まった企業群で伸び率が3.58%増だったのに対し、直前に決定した企業群では同0.2%にとどまった。春季労使交渉時は物価上昇率が足元より高く、生活防衛のための賃上げ機運が高まっていた。

物価高で実質賃金はマイナス

数%の上昇では物価高をカバーしきれない。厚生労働省が公表した5月の実質賃金は前年同月比で1.2%減で14カ月連続のマイナスだった。23年の春季労使交渉は連合の最終集計で賃上げ率3.58%と30年ぶりの伸び率を実現したが、それでも実質賃金はマイナスのままだ。

みずほリサーチ&テクノロジーズは実質賃金は24年度までマイナスが続くとみる。酒井才介主席エコノミストは「夏ボーナスの伸び率2.60%を受けても実質賃金のマイナスは続く。旅行など一部サービス分野は回復が期待できるものの全体としては夏のボーナス商戦の大幅な回復は期待しにくい」と話している。